今日は本業の葬儀のお話です。
皆さんの町にも「○○会館」とか「○○セレモニー」みたいな大きな葬儀場はありませんか?普通に考えて「葬儀屋さんって儲かるんだなぁ~」って思いますよね。結論から言うと儲かります。あ、いや正しく言うと儲かりました。になるかと思います。
あれだけ多くの葬儀場を建設するとなると1棟あたり土地代+建物代で10億円以上はかかります。それだけお金を投資しても回収できるから建てたのです。
ですがそれはバブル時代のお話。今から30年ほど前、バブル時代の葬儀費用の平均価格は1葬儀あたり300万円でした。お通夜、告別式と2日間にわたり盛大に行われ、参列者は少なくても100名以上、多い方は500名くらいとっかえひっかえ来るのですから一大イベントな訳です。
1葬儀300万ですから仮に1日1件しか無かったとしても、月に30件もこなせば単純計算で月商9000万円です。1ホールで年商10億円以上。1日1件ということはありませんので2件なら20億円、3件なら30億円の年商が出るわけです。
葬儀業は利益率の高いビジネスです。祭壇は使い回し、スタッフも使い回し、場合によってはお花だった使い回しですから、上手くやれば利益率は50%を超えます。年商10億だとしても2~3年で建設費の元が取れてしまう美味しい商売だったのです。なので実績を積めば積むほど銀行も融資してくれますし、次から次へと建設されていたのでした。

多磨霊園(本文とは無関係です)
コロナ禍で収益モデルが大幅に狂った!
その高収益なビジネスモデルがコロナ禍で急激に悪化しました。バブル時代に平均300万円だった葬儀費用はバブル崩壊と共に徐々に節約志向になり、250万→200万と下がり続け、コロナ禍以前は平均150万円前後まで落ち込んでおりました。
それがコロナ禍で直葬が主流になり一気に20万円前後まで落ち込みます。コロナ禍が落ち着けば再び上昇するだろうと考えていましたが、直葬や1日葬にすっかり慣れてしまった消費者の心理は戻ってくることはなく、現在の葬儀平均価格は50万前後だと思います。
「思います」というのはきちんと統計を取ったわけではなく、断言ができないので感覚で言ってるのでそんな言い方になります。田舎に行けば行くほど未だに200万とかかけて盛大に葬儀を行ってますし、都心部に行けばいくほど直葬の割合も増えてきますので。
当初300万円という葬儀平均価格を想定して建てられた葬儀場ですが、これが1/6まで下がったわけですから死活問題です。当時は1会場に4~5名の常駐スタッフがいた所も2~3名に減らされたり、今では4~5名1チームで2~3会場を掛け持ちで回していたりします。
葬儀費用が高額だったから必要だった互助会も、50万で済むなら不要なので新しく入る方もほとんどいません。
こうなってくると売上なんて焼け石に水状態なのでいつ潰れてもおかしくないような所も多いのではないかな?と思います。実際、ベテラン社員は退職しましたし、パートさん達もコロナ後に復帰しましたが次々に転職してゆきました。
「高齢化社会で葬儀屋は儲かるよね~」なんて言われますが、それはローコストで1~3名くらいで回してる小さな葬儀屋だけだと思います。こういう葬儀屋は葬儀の依頼が入ったら会場をレンタルしてあちこちで執り行うだけなので維持コストがほとんどかかりませんので。
まるで氷河期に突入した大型恐竜たちが餌が無くなって絶滅してゆくような有様です。大きな肉食恐竜が小さな肉食恐竜を食べ出して、結局生き残るのは順応性の高い小型哺乳類だけなのでしょう。
それにしてもあの巨大なホールや会館はどうなるのでしょうか?おそらく維持するために莫大な借金を作っているでしょうから取り壊して更地に~なんて余裕はないと思います。
近い将来「え?まさかあそこが!?」みたいな倒産劇が起きるのでしょうね・・・怖い怖い。でもこれで良いのかもしれません。葬式やお墓に何百万円もかけるくらいなら生きてる人の方に遺しておいた方が故人もきっと喜ぶと思います。もうそんな時代じゃないんですよ。あ~あ、私も早く転職しないとな。