今日は墓じまいの費用と相場についてお話したいと思います。
墓じまいとは?
墓じまいとはお墓を片付けて更地に戻すことを総称してそう呼びます。
「墓終い」とか「墓じまい」「墓仕舞い」など様々な書き方をされていますが、「仕舞う」は能のアンコールのような意味合いがあった為、後片付けには適していないということで「墓終い」と「墓じまい」の方が多く使われるようになり、より変換しやすく読みやすい「墓じまい」という書き方が一般的になり定着したようです。
墓じまいが盛んになったのはここ数年の話
そもそもお墓というのは親族の中から墓守を選んで先祖代々受け継いでゆくものと考えられていた為、墓じまいと言う発想すらありませんでした。
ここ最近(2018年頃~)になって少子高齢化が一般的に認知されはじめると同時に少しづつ墓じまいをする方が増え始め、5年経った今ではお墓を建てる人よりも墓じまいをする人の方が多いのではないか?と言うくらいちょっとしたブームになっています。
余談ですがお墓がこんなにブームになったのは高度成長期からです。江戸から明治・大正・昭和初期頃までお墓はお金持ちだけが建立する物のような扱いでしたが、戦後の高度成長期に一般人もこぞって建立するようになり一大ブームになりました。
墓石屋さんが墓じまい屋さんに転向
高度成長期からバブル時代までの墓石屋さんはたいへん儲かりましたので、この時代にたくさんの模倣者が現れ、霊園周りに大小様々な石材店が乱立していることからも当時どれほど儲かったのか計り知れます。
当時は従業員が全員ベンツで通勤するほど羽振りが良かったようですが、今では1ヶ月に1基売れるか売れないかくらいの衰えぶりで、高齢になった石材店の社長は「とてもじゃないけど息子には継がせられない」というお話をよく耳にします。
そんな中でも時代の流れに逆らわない石材店は墓じまいも1つの事業として積極的に取り組んでます。頑固なところは墓じまいには参加せず、ひたすら墓石を作り続けていますが、どうなってゆくかは皆さんもお判りかと。
お墓は1基建てれば100万円~300万円ですが、今は規模が小さくなり中国産の1枚プレート型が主流になり1基60万前後です。墓じまいの平均価格は30万前後ですから建てるのも片付けるのも同じくらいの料金なので今の石材店は墓じまいを主軸にしているところも少なくはないのです。
墓じまいの費用について
さて本題の墓じまいの費用についてですが、料金の差はお墓の大きさや使用してる墓石の重量、墓地の位置や搬出のし易さ等、様々な様相で見積もられます。そのため一概にいくらです!とは断言できないので多くの石材店では料金を明記してません。それでは本記事を書いた意味がありませんので何にいくらかかるのが書いてゆきましょう。
離檀料金
キリスト教や神道などにはありませんが、仏教には檀家制度というものがありますので墓じまいの前に離檀しなければなりません。正式には離檀費用というものはないそうなのですが、先祖代々お世話になったお寺に対してお礼を込めて最後のお布施という意味で支払われているようです。
この離檀料はお布施の一部なのでそもそも料金の相場という物がありません。お寺の中には具体的に「離檀するなら○○万円持ってきなさい」と指示するお寺などもあるようですが、一般的な相場は、年間管理費×10年分の範囲内のようです。例えば年間の管理費が6,000円であれば10年分の6万円とかそんな感じです。
お寺側の事情としては檀家さんが居なくななってしまう=収入が減るということを懸念しているだけですので、ある程度まとまった金額を包むことで丸く収まりがつく事が多いです。
ちなみにこの離檀交渉は祭祀継承者とお寺の当人同士で話し合う事が通常で、代理人を立てる際は弁護士以外は許可されていません。長い付き合いがあるからと石材店が間に入って交渉の手伝いをするケースが多々あるようですが、これは非弁行為といって立派な犯罪行為になりますのでご注意ください。
基本料金はお墓の大きさと規模から
一般的なお墓の敷地面積は1坪(3.3㎡)です。よく墓じまい○○万円~等と宣伝している業者がいますが、この場合の料金はこの1坪あたりの基本料金を指している事が多いです。都心部などはこれ以下の広さの場合もありますし、地方に行くと数倍大きい広さの墓地もあります。なので、まずは墓じまいをしようとするお墓がどれくらいの大きさなのか調べる必要があります。
墓石の大きさと搬出経路による費用加算
二番目に大きな見積もり要素は「墓石の大きさ」と「搬出経路の難易度」です。墓石が小さければ人力による搬出も可能ですが、100kgを超えれば小型クレーンやユニックなどが必要になり、その分費用もかかります。
さらに重要なのは搬出経路の確保で、お墓の前にユニック車を停めることができれば安く済みますが、車両の出入りが難しければ人海戦術で運ぶしかなくなりますのでその分費用は割高になります。過去の例で見ると、市営霊園など整備されている墓地は安く済みますが、都心部の狭い寺院墓地や、山の傾斜にある車両の入れない墓地などは割高になります。

墓じまいの費用が高く付く高台のお墓
墓石処分の費用差
墓じまい後の墓石処分費用でも差が出ます。地方は処分費用が安いですが都心部に行けば行くほど処分費用は高額になります。例えば多磨霊園で排出された墓石は神奈川の山間部の方まで行って処分されていると聞きましたので運搬費などは高額だと思います。
手続き関連費用
墓じまいの際に必要な改葬手続きなどの書類申請手続きなどの代行費用がかかります。通常は祭祀承継者がご自身で行いますので無料ですが、墓石屋さん等に依頼すると3000円~5000円程度の代行手数料を徴収されます。
郵送でも申請できる市区町村もありますので節約されたい方は郵送申請すると良いと思います。
閉眼供養など宗教関連の費用
宗教によって要不要ありますが、閉眼供養費など墓じまいに伴う法事費用も考慮しなければなりません。この費用は規模や宗派の考え方などで金額がバラバラであり、相場がありませんのでここで書くことができません。
墓じまい後の遺骨処分費用
遺骨の処分というと聞こえは悪いのですが、墓じまいを終えた後の永代供養や散骨などはこれに該当します。遺骨の数量を正確に把握しておく必要がありますので、石材店等に撤去の見積もりを依頼する際にカロート内の遺骨がいくつあるか確認してもらうことをお勧めします。(石碑には4名分の記名しかないのになぜか骨壺が5つあった等よくあります)
手間は省けるが高額になりがちな永代供養
元々お墓があった菩提寺の合祀簿などに永代供養をするのが一般的ですが、お寺によっては1名あたり30万などと高額な永代供養料が必要になるので注意が必要です。相場は15万/名あたりのようですが、宗派やお寺の規模、合祀墓の収容許容量などで各地バラバラです。
高額なものは80万円/名などもあります。例えばお墓に5体入っていたら80万円×5体=400万円です。恐ろしく高額で震えてしまいますね。
手間はかかるが安価な散骨
埋蔵してあった遺骨を乾燥させて、粉骨してから散骨・・・と準備に時間がかかるので若干の手間はかかりますが最も安価で済むのは散骨です。乾燥や粉骨、散骨までセットになったコースを頼める専門業者さんもいますので、菩提寺の永代供養費用が高額な方には検討お勧めです。
平均的な相場は粉骨費用も含めて5万円/名前後です。中には1.5万円など格安業者もいますが、大手を真似ただけの怪しい個人業者も多いので要注意です。
抽選だけど当たれば安価な自治体の合祀墓
最近人気なのが自治体が運営する大きな霊園が新設した合祀墓への埋蔵です。東京都立小平霊園や、多磨霊園の樹林墓地などが有名です。遺骨のまま埋蔵すると14万ですが、粉骨すると4万円という安さで埋蔵することができます。
デメリットは人気過ぎて抽選なので、すぐには埋蔵できない事が多い点と、都立霊園なので申込者は東京都内に3年以上在住でなければならないという制限があることです。
この人気ぶりを見る限り、筆者の考えでは今後はこういった樹林墓地型の合祀が主流になると思われ、全国各地の自治体が真似して始めるようになると思います。
墓じまい費用のまとめ
ということでまとめますと、墓じまい費用は以下のような感じなります。
離檀費用+閉眼供養費用+墓石撤去費用+遺骨処分費用=墓じまいの総額
この中でどれが一番高額になるか?というのは言い切れません。参考までに筆者が実際に体験したカロート内3体分の墓じまいの費用はこんな感じです。
離檀費用 10万円(お布施)
閉眼供養費用 5万円(15分で終わった)
墓石撤去費用 30万円(石材店に払った)
遺骨処分費用 10万円(東京湾に散骨してもらった)
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墓じまいの総額 55万円税込み
安いか高いか聞かれたら高いですよね。でもご先祖様が建てたお墓を放置しておくことはできませんし、あの大きな墓石を片付けたりすることを考えたらむしろ安いんじゃないかと思えてきました。
最初は菩提寺への永代供養も検討していたのですが、1体あたり15万必要だと言われた事と、遺骨を形として遺しておくのは自分的に納得できなかったので海洋散骨にしました。閉眼供養の当日に散骨業者さんにお寺まで引取にきてもらったので出張料で+1万円支払いましたが3体で10万円で済んだことが安く墓じまいできたポイントだと思います。
母が亡くなった時に40年以上住んだ公団を退去するときも「退去費用はいくらかかるんだよ!」とビビってましたが、今回も実際にやってみるとたいした事なかったなぁと思いました。良からぬ業者があれこれふっかけてきますが事実を知っていれば怖い物はないです。皆さんも知識武装して是非墓じまいに挑んでください。